今日(まで)の本

一夢庵風流記 (新潮文庫)
雑賀礼史さんはそのデビュー作『龍炎使いの牙』のあとがきにおいて、隆慶一郎氏の『鬼麿斬人剣』と言う作品に衝撃を受けたと書いている。この事がどうにも頭の隅に引っかかって仕方なかったのだが、今回初めてこの作品を読んでそのわだかまりが氷解した。『リアルバウトハイスクール』の主人公・南雲慶一郎は何故に『慶一郎』なのか。当然のごとく隆『慶一郎』であり、前田『慶』次郎だったわけだ。そう気づいて思い返してみると、『リアルバウト』中に埋没した隆作品からの流れがいくつもいくつも見つかってきた。表面的には各種マンガ・特撮・アニメ・洋楽・哲学からのパロディや言葉遊びのオンパレードなので奇怪なラノベとしか捉えられなかったが、ラノベの皮を被った時代小説、それも武士階級でなく漂白の民を主役に据えたまさに隆作品に連なる時代小説であると解釈出来るようになった。
まあ分かったからと言って、作品への評価や興味が変わるわけでもなく、隆氏の時代小説もリアルバウトもやっぱり好きなのはそのまま。